8時間寝て、8時間仕事し、8時間遊ぶ

20代のころ、オーガニックコスメのジャンルで雑誌のライターとして少しだけ仕事をしていたことがある。その道に誘ってくれた編集者は、残念ながら今編集の仕事はしていないと思うが、あまりにもセンスがずば抜けていた彼女が私に与えてくれた影響は計り知れない。彼女がふいに放った言葉で、何度も反芻しては大切にしているものがたくさんある。

そのうちのひとつが「8時間寝て、8時間仕事し、8時間遊ぶライフスタイル」というもの。どういう文脈で彼女がこの考え方について話していたか忘れてしまったが、「こういうライフスタイルが理想だよねー」みたいな感じだったと思う。1日24時間を3で割って8。たしかに!8時間も仕事したとして、8時間寝て、さらに8時間も遊べてしまうんだ!と私はそのとき衝撃を受けた。

実際は、じゃあ仕事場への移動の時間はどうなんだとか、風呂や炊事の時間はどうなんだとか、いろんな「その3つにカテゴライズできない(ように感じられる)時間」というものがあり、そんなスッキリと各8時間を確保できないのだけれども、それでも「8時間寝て、8時間仕事し、8時間遊ぶライフスタイル」という概念が持つ魅力は色褪せず、折に触れて思い出し、そんなふうに生きたいなと思う。

時間という概念は人間が作り出したものだと思うけれど、なんという発明だろうと感じ入ってしまう。時間があるから、時の流れが速いとか遅いとか判断できるし、年齢を認識することもできるし、時間を大切にすることもできるのだ、と私は思う。

私はとにかくすぐにだらけてしまう。今日も1日を無駄にしてしまった……という敗北感でその日を終えることも少なくない。しかしごくたまに、月に1回くらいかもしれないのだけれども、今日はよくやれた!と気持ちよく終えることのできる日がある。それはどんな日かというと、細かく計画を立て、その通りにやれた日だ。

計画を立てても、その通りにいかない日のほうが多い。けれどそれで腐ってしまい計画すら立てないと、計画通りに行かなかった日よりもさらに無駄の多い日になる。計画を立てなければ何もはじまらないのだ。ということが、ここ最近(最近といっても一週間とかじゃなくて年単位)でわかってきた。

一年の計は元旦にありというけど、1日の計画だって早朝にありなのだ。計画を立てるということは時間を管理するということでもあり(少なくとも姿勢として)、そこへの挑戦は「8時間寝て、8時間仕事し、8時間遊ぶライフスタイル」に魅力を感じる自分の個性と繋がっているように感じる。

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