私にとっての「仕事」 #仕事美辞外伝04

『仕事美辞』は、仕事にまつわる質問にエッセイでお答えする本だ。「仕事」と言われて何をイメージするかは人によってさまざまだと思う。人によってはお金をもらうために仕方なく取り組む作業であり、人によっては自己実現の場であり、人によってはこの世界を生きていくシンプルな手段であり、きっと人の数だけ答えがある。

私にとって仕事とは何か。自分が生きる理由を探せる場所、という感じがする。物心ついた頃からいつも、自分はこれでいいのだろうか、こんな人間に価値はあるのだろうかという気持ちがベースにある。なぜかはわからない。気づいたらそこにあった。あれが理由かな、と思えるものもいくつかあるが、そうという気もするし、そうではないような気もする。特に明らかにするほどの価値もない気がする。

仕事は他者との関わりであり、雰囲気だけに終わらない、明確な何かしらのやり取りが行われる。それがお金であったり労働であったりするわけで(本書ではそれをエネルギーと言っているが)、そこには具体的な利害関係がある。だから、自分の存在意義のようなものが明確にわかる。それは自分が肯定されるという感覚とは少し異なり、自分がここに存在しているという意識を持っていいんだという感覚に近い。自分が行った何かしらのことが、何かしらの反応を起こしていく。それが素晴らしいものであるとは、もちろん限らないが。

私は一人っ子で、かなり放任主義の家庭でひっそりと成長してきた。だから自分があるようなないような感覚が強いのだと思う。本当に私が存在しているのかがよくわからない。そんな私にとって、仕事はそういった寄るべなさのようなものを和らげてくれるものと言えるのかもしれない。

どうしてこのような趣旨の本を書いたのですか?と言われることがある。
いちばんは「これなら書ける」と思ったからだ。澱みなく、偽りなく、自分の考えを練り上げてまとめることができると思ったから。自分がずっと考えてきたことだから、自分がこれに助けられてきたから。仕事があったから、自分が生きている。仕事というものに対しての感謝状のようなものが書きたいと思ったのかもしれない。

© 2023 AYANA